2011年3月30日に出版された「ジェノサイド/高野和明」。
- 第65回日本推理作家協会賞長編及び連作短編集部門受賞
- 第2回山田風太郎賞受賞
- 2012年版このミステリーがすごい!1位
- 2011年週刊文春ミステリーベスト10・1位
- 第33回吉川英治文学新人賞候補
- 第145回直木三十五賞候補
- 2012年本屋大賞2位
これだけの受賞歴や賞の候補作に選ばれていながら未読であったため、いざ単行本を購入。
結論、この本に出会えてよかった、こんな出会いがあるから読書はやめられない!!と感じた名著でした。
ただただ面白い。
イラクで戦うアメリカ人傭兵と、日本で薬学を専攻する大学院生。
まったく無関係だった二人の運命が交錯する時、全世界を舞台にした大冒険の幕が開く。
アメリカ人の情報機関が察知した人類絶滅の危機とは何か。
そして合衆国大統領が発動させた機密作戦の行方は──
引用:ジェノサイド 上
これは単行本の裏表紙のあらすじ(=ウラスジ)から引用しました。
このウラスジを書いた担当者の方には申し訳ないのですが、正直言うと、あまり惹かれないな・・と思ってました。。
ざっくりしていて、おおよそのストーリーすら想像つかないなぁと。
でも読んだ後にウラスジを読み直してみると、このようにしか書きようがない上に、このストーリーの密度はウラスジに書き切れるようなレベルにないということが判明しました。
ただただ面白い。読んでる間ずっと面白い。
これに尽きます。
上下巻合わせて約800ページあるにも関わらず、ずっと心を鷲掴みにされたままでした。
SF好きはもちろん、理系の方で化学を専攻していた人や戦闘や武器などのマニアの人にはたまらないだろうなぁと。
ぼくはまさに大学で化学を専攻していたので実験器具だったり化学反応だったり、読み飛ばしても問題ないところまでニヤニヤしまくりでした。
ジェノサイド=大量虐殺
タイトルの”ジェノサイド”の和訳は”大量虐殺”。
イエーガーを待ち受けていたのは、人間という生き物が作り出した、この世の地獄だった。
引用:ジェノサイド 下
エグイ描写や心の痛むシーン、実写だったら絶対見れないだろうなという場面がかなり出てきます。
エンタメ小説においては、読者自身が体験できないこと、体験したくもないようなことを、いかにリアルに疑似体験させるかがキモになってきます。
その点において、この小説は心が痛くなるくらい、人によっては読むのをやめてしまうくらい超絶な体験ができます。
きっと人間が嫌になることでしょう。
一方で、人間の残虐性や暴力性が強烈に鮮明に描かれているからこそ、その逆の人間がキラキラ輝いて見えて心が温まるということも言えます。
きちんと救いを用意してくれているので、ぜひ最後まで読み切っていただければと思います。
3つの場面の並行展開
ウラスジにもあるように、この小説は日本・アメリカ・アフリカの3場面でストーリーが展開していきます。
当然最終的には全てが1つになるのですが、緊張感のあるアフリカでの戦闘シーンから、専門用語たっぷりの日本のシーンまで、それぞれでストーリーにきちんと起伏があり読んでいて飽きがきません。
どの場面も中だるみせずスピード感があって読む手が止まらなくなります。
一点気になるのは、日本のシーンはやや専門用語が多いかなという点ですね。
薬学を専攻している大学院生というだけあって、理系用語が頻出します。
理系人間からするとワクワクするシーンでもあるのですが、そうじゃない方からしたらなかなか進まないんじゃないかな、と。
それでも言いたいことは、
読んだ後にはそんじゃそこらの本では得られ難い読書体験ができる。
ということ。
超絶な読書をぜひ体験していただきたい。
これだから読書はやめられない。
こういう出会いがあるから読書はやめられないんですよね。
ハズレ本を引いたり、あまりに合わなくて最後まで読めない本があったりする中で、こんなに気持ちを持っていかれる作品もあるという事実。
”ジェノサイド”は、10分程度の空き時間でも貪るように読んでしまうような、寝る時間も惜しんでひたすら読んでしまうような、そんな極上の読書体験ができる本です。
大量虐殺という強烈なタイトルにも関わらず、複数の賞を受賞し、数多の人を虜にしてきた”ジェノサイド”。
ぼくの持っているボキャブラリーの中で最も強い言い方をすると、
これを読んでいないなんて人生損している!!
と、未読の皆さんに伝えたいです!!
次に何を読もうか迷っている方、これから読書を始めようと思っている方、どのような方でもオススメです。
極上の読書体験を約束します。